サムネイル画像の問題『どこが間違っているでしょうか?』どこがおかしい部分かすぐに気づきましたか。何が間違っているのかわからないという人は冠詞に注目してみてください!何か違和感ありませんか?
答えはdesが間違っています。正しくはdeです。

フランス語の授業で『「形容詞+名詞」の語順のとき、不定冠詞複数形のdesがdeに変わる』という文法事項を習ったことは覚えているでしょうか。
意外と見落としがち・忘れがちな文法項目なので先生がテストに出しやすい部分ですね。
でも残念なことに僕たちが授業や文法書で頑張って覚えたこの文法事項、実はほとんど使われなくなっているのです。
今回は文法に関するブログ記事として、この文法項目をこれから習う人・または記憶からすっ飛んでしまった人にもわかりやすい説明で復習して、そのあとに現在の使用状況についても言及していこうと思います。
「形容詞+名詞」の語順のとき、不定冠詞複数形のdesがdeに変わるって?
ここからは段階的にフランス語の文法を説明していくので「そんなもん知っとるわ!」「当たり前じゃん!」という人はサーっと読み飛ばして、「この文法項目の現在」の部分までワープしちゃってください。
フランス語の形容詞と名詞の語順
まず基礎的な文法事項として、通常フランス語では形容詞は名詞の後ろに置かれます。
英語と順番が異なるので最初は戸惑いますね。日本語も形容詞は前に置かれるので慣れるまで違和感がすごいかもしれません。でも実際、多くの言語では「名詞+形容詞」の語順が普通なのです。フランス語、イタリア語、スペイン語などのロマンス諸語も形容詞は名詞の後ろに置かれますし、東南アジアのカンボジア語でも東アフリカのスワヒリ語でも中東のトルコ語でも同じことが言えます。そういえば英語でも何か冷たい飲み物がほしい時に ”Something cold please !”という言い回しがありますね。この言い回しも英語では珍しいことに「名詞+形容詞」の語順になっています。
例:un stylo bleu 「青いペン」une fille intelligente 「頭のいい少女」
しかしフランス語にはgrand,petit,beau,vieux,nouveauのように名詞の前に置かれる形容詞もいくつか存在します。
例:un grand sac「大きなバッグ」une petite table「小さな机」
(ここまでで「むむむ、よくわからないぞ」となった方は一度教科書や文法書の形容詞ページを見直してみてください。理解したらまた戻ってきてくださいね!いつまでも待ってます!)
不定冠詞の意味はしっかり理解してる?
不定冠詞の意味はしっかり頭の中に入っていますか?
不定冠詞は名詞の前に付いて、
単数形un,uneなら「ひとつの、ある」
複数形desなら「いくつかの」
という意味を名詞に持たせる働きをしています。
例:un stylo「1本のペン」une pomme「1個のリンゴ」des livres「何冊かの本」
今回大事なのは不定冠詞複数形、そうdesです!
不定冠詞複数形des+形容詞+名詞の場合
①desのすぐ後ろに名詞が続く、もしくは②des+名詞+形容詞なら問題ないのですが、③des+形容詞+名詞という語順になるとdesが変形してしまうのが今回のミソです。
例
①des+名詞
・des pommes 「何個かのリンゴ」des maisons「何軒かの家」
②des+名詞+形容詞
・des pommes rouges「何個かの赤いリンゴ」des maisons bleus「何軒かの青い家々」
③des+形容詞+名詞 ←desがdeに変形
・de petites pommes「いくつかの小さなリンゴ」de grandes maisons「何軒かの小さな家々」
本来なら、des petites pommesやdes grandes maisonsとなる不定冠詞複数形のdesは③の語順の時にだけdeに変形します。
この文法項目はもし最近習ったなら絶対覚えておいてください!先生が出題する可能性大の文法項目です。「みんな覚えてるかな~」って感じでニヤニヤしながら出題してきます!
“不定冠詞desは形容詞+名詞の前に付くときだけdes→deに変化”
定冠詞複数形les+形容詞+名詞の場合
不定冠詞だけではなくて定冠詞にも複数形lesがあるから、これもles→leに変わるの??と思う人がいるかもしれません。しかし、定冠詞複数形lesはどのような語順でもlesのままです!
例:単数から複数に変えてみます
une petite pomme → de petites pommes
la petite pomme → les petites pommes
この文法項目の現在
フランス語の文法を勉強する際には今回勉強・復習した文法項目は大事です。
しかしこの文法項目「形容詞+名詞の語順では不定冠詞複数形desがdeに変わる」は
なんと、
日常生活から消えかかっています!!
あんなに頑張って勉強して覚えた表現なのに実際はどんどん使われなくなっている表現なのです!
あゝ無情
なので先ほど説明した
“de petites pommes”は”des petites pommes”になり、”de grandes maisons”は”des grandes maisons”になるのです。
なぜ消えかかっているかというと、フランス語が(ある点から見ると)進化しているからです。
言語はその進化の過程でより使いやすい、使用していて楽な形式へと変形していくことがあるので今回もその現象と言えそうです。日本語の「ら抜き言葉」も発音のしやすさから使用頻度が増えました。
日常生活から消えかかっているこの文法項目ですが、なんと書き言葉でも使われることが少なくなっています。フランスの新聞Le MondeやLe Figaroでも検索をかけたところこんなものが見つかりました。
La dotation des tournois Challengers ou Futures [2e et 3e divisions du tennis mondial] augmente quand même toujours, et dans les plus grands tournois, on a vraiment fait des grands pas en avant en termes de répartition.
http://www.lemonde.fr/roland-garros/article/2015/05/21/roger-federer-je-peux-encore-gagner-un-grand-chelem_4637982_1616946.html#D9ixsGWPBmkbOoP5.99
«Il faut des nouveaux visages», explique Brian Skeet, excentrique réalisateur londonien qui fait son marché devant un écran interactif avec les photos de 250 jeunes acteurs accrédités à Cannes.
Le Figaroの引用文はセリフ部分ですね。パソコンから見ている人はぜひフランスの新聞サイトに行って「ctrl+F」でdesと検索してみてください。
まとめ
まず、フランス語文法を勉強している人は「形容詞+名詞」の語順のとき、不定冠詞複数形のdesがdeに変わることを覚えましょう。日常生活での使用頻度が少なくなってきているからといって誤用は避けるべきです。今後フランス人がdesをdeに変えずに使っているシーンに出会ったら、今日勉強したことを思い出して、「ああ、de+形容詞+名詞が使われなくなってる。。。悲しいな~」と思いましょう。
少なくとも文法のテストやフランス語検定・DELF・DALFの筆記試験では正しい文法が求められるので、この文法項目は無駄になりません。よかった!フランス語の文法は細かい注意事項がたくさんありますが、知れば知るほど深い言語なのでめげずにぜひ今後も勉強を頑張ってください。文法書や問題集とにらめっこするだけではなくてたまには、今回のようなブログ記事で復習をしながら着々とフランス語運用能力を高めていきましょう。