フランス語の代名動詞とは何か
- 主語と同じものを表す再帰代名詞+動詞のかたまり。
- 再帰代名詞は動詞の前に置かれる。
フランス語には自動詞・他動詞に加えて代名動詞(だいめいどうし)という動詞のカテゴリーが存在します。日本語はもちろん英語にも存在しない文法事項なので初めは慣れないかもしれませんが、このページで代名動詞がどのようなものかを学習していきましょう。
代名動詞の作り方ー主語人称代名詞と再帰代名詞
代名動詞の意味や用法について学習する前に、まずはどのようなものが代名動詞と呼ばれるのか形を見ることから始めましょう。
フランス語の代名動詞は再帰代名詞と動詞の組み合わせです。再帰代名詞(さいきだいめいし)は下の表にある「私」、「君」、「彼」などに対応するme/te/se/nous…などの代名詞のことを指します。
主語人称代名詞 | 再帰代名詞 | |
私 | je | me |
君 | tu | te |
彼 | il | se |
彼女 | elle | se |
私たち | nous | nous |
あなた・あなた方 | vous | vous |
彼ら | ils | se |
彼女ら | elles | se |
- 他動詞の前に再帰代名詞を付けて代名動詞が作られる。
- 代名動詞の原形はse+動詞である。
代名動詞は上の表で見た再帰代名詞と動詞の組み合わせで作られ、代名動詞の原型は下の2つの動詞のようになります。
- coucher:~を寝かせる
- se coucher:眠る
- promener:~を散歩させる
- se promener:散歩する
再帰代名詞と動詞の複合形である代名動詞は主語に合わせて形が変化します。
- Je me couche. 私は眠る。
- Tu te couches. 君は眠る。
- Il se couche. 彼は眠る。
今まで見てきた自動詞や他動詞は主語に応じて動詞が変化するだけでしたが、代名動詞の場合、動詞だけでなく再帰代名詞も変化するためより慎重に活用を行う必要があります。
フランス語の代名動詞の用法
代名動詞には4つの用法があります。ここからは1つずつ用法を解説・比較していきます。
- 再帰的用法「自分を~する」「自分に~する」
- 相互的用法「互いに~する」
- 受動的用法「~される」
- 本質的用法
代名動詞の再帰的用法「自分を~する」「自分に~する」
再帰的用法は動詞の対象が主語自身に再帰する(戻ってくる)用法です。例えば他動詞coucherは「~を寝かせる」という意味がありますが、代名動詞se coucherは「自分を寝かせる」=「眠る」という解釈がされます
- Je me couche.
私は自分を寝かせる。
=私は寝る。
- Je me donne beaucoup de mal.
私は自分に多くの苦労を与える。
=私は大変苦労する。
ただし一部の、体の部位を目的語として取る代名動詞は例外的な解釈が必要なので注意が必要です。この場合、再帰代名詞は「私の~」や「君の~」を意味します。
- Je me lave les mains.
私は私の手を洗う。
=私は手を洗う。
- Tu te blesses la main.
君は君の手を傷つける。
=君は手に怪我をする。
代名動詞の相互的用法「互いに~する」
相互的用法の主語は必ず複数形(nous/vous/ils/elles/on)になります。
- Ils s’aiment.
彼らは愛し合う。 - Ils se regardent.
彼らは見つめ合う。 - Ils s’écrivent souvent.
彼らは手紙を送りあう。
相互的用法には「お互いに〜する」という意味が含まれているので主語が必ず複数形になります。
代名動詞の受動的用法「~される」
受動的用法の主語は必ず人や動物以外の無生物主語です。普通の受動態・受け身形とは用法が若干異なるので、さらに詳しく勉強したい人は受動態・受け身の用法と作り方(parとdeの違い)を例文とともに解説ページで確認してみてください。
- La porte se ferme.
扉が閉まる。 - Le français se parle en Afrique.
アフリカでフランス語は話されている。
代名動詞の本質的用法
一般動詞から代名動詞に変化するときに意味が大幅に変わるものや、一般動詞では使われず代名動詞としてのみで用いられる動詞を意味します。例えば動詞souvenirは代名動詞se souvenir de以外では使われない特殊な動詞です。
- Je me souviens d’elle.
私は彼女を思い出す。 - Il se moque d’elle.
彼は彼女を馬鹿にしている。
代名動詞の命令法
代名動詞にも命令法が存在します。命令形の形は動詞+-(ハイフン)+人称代名詞強勢形となります。
- Tu te lèves.
君は起きる。 - Lève-toi !
起きなさい!
- Vous vous promenez.
あなたは散歩する。 - Promenez-vous.
散歩してください。
フランス語の代名動詞の複合過去
代名動詞は複合時制で助動詞にavoirではなくêtreを取ります。
複合時制では、再帰代名詞が動詞の直接目的補語「~を」として用いられている場合に過去分詞を主語と性数一致させる必要があり、間接目的補語「~に」として用いられている場合は一致しません。
- 語順は主語+再帰代名詞+être+過去分詞である。
- 否定形の語順は主語+ne+再帰代名詞+être+pas+過去分詞である。
- Je me suis couché(e).
- Tu t’es couché(e).
- Il s’est couché.
- Elle s’est couchée.
- Je ne me suis pas couché(e).
- Tu ne t’es pas couché(e).
- Il ne s’est pas couché.
- Elle ne s’est pas couchée.
複合時制の代名動詞が性数一致する場合としない場合
代名動詞が複合時制の際に性数一致するかしないかの判断はほとんどの場合、次の3パターンから推測できます。
- Elle s’est levée.
彼女は起きた。 - Elle s’est souvenue de son enfance.
彼女は幼少期を思い出した。 - Elle s’est lavé les dents.
彼女は歯を磨いた。
代名動詞の性数一致【Aパターン】
最も一般的な代名動詞の用法です。
代名動詞の後に直接目的語が続かない場合は過去分詞を主語に性数一致させます。代名動詞の後に副詞・副詞句、前置詞・前置詞句が続いても性数一致は行います。
- Elle s’est levée.
彼女は起きた。 - Elle s’est levée tôt.
彼女は早く起きた。 - Elle s’est promenée.
彼女は散歩した。 - Elle s’est promenée dans un parc avec son chien.
彼女は公園で犬と一緒に散歩した。
代名動詞の性数一致【Bパターン】
代名動詞が含まれる熟語の用法です。
se souvenir deやs’apercevoir deのように代名動詞+前置詞という形の熟語が存在します。この場合は過去分詞を主語に性数一致させます。
- Elle s’est souvenue de son enfance.
彼女は幼少期を思い出した。 - Elle s’est aperçue de son erreur.
彼女は間違いに気づいた。
代名動詞の性数一致【Cパターン】
例外的な代名動詞の用法です。
se laverやse blesserなどいくつかの表現では代名動詞の後に続く名詞が直接目的語となるため、過去分詞は主語に性数一致しません。
- Elle s’est lavé les dents.
彼女は歯を磨いた。 - Elle s’est blessé la main.
彼女は手に傷を負った。